考古調査士資格認定機構


考古調査士資格制度について

考古調査士資格とは

 埋蔵文化財調査には様々な知識と技術が必要です。遺跡発掘に関わる調査・記録技術や安全対策、衛生管理などの管理技術、考古学的な専門知識などが必要です。調査成果を的確に報告書にまとめあげる知識と技能も必要です。さらに近年では、それらを社会に向けて発信し、地域の歴史として地域住民に還元することが重要な任務になってきました。
 埋蔵文化財の調査と保存・活用に関する技術と知識は、専門的な領域に属し、一朝一夕で修得できるものではありません。大学で、長期の時間と費用を費やして修得したものです。また社会での実務経験も必要です。
 考古調査士資格とは、そのような長年にわたる埋蔵文化財関係の訓練を積んだ人に対して、与えられる専門資格です。
 しかし、弁護士や医師のような国家資格ではなく、民間組織が発行する資格であり、独占的な資格ではありません。
 大学などの教育機関で、考古学を専門に勉強した学生や、あらためて学びなおした社会人からの申請に基づき、資格認定機構が、その内容を審査し、資格を授与するものです。

資格の必要性

 我々日本人の先祖が残した文化や社会の痕跡は、遺跡として地下に記録されております。そのような地下に眠る文化財を埋蔵文化財と呼びます。それらは日本全国に満遍なく存在しており、文化財保護法ではそれを「国民共有の財産」と規程しております。しかし、1960年代からの急激な経済成長による国土開発に伴って、遺跡の多くが発掘調査で記録された後に、破壊されてゆきました。発掘調査が円滑に進展するように各地に調査機関が整備され、国土の開発事業に会わせた迅速な対応が整備されてきました。
 しかし、21世紀の現代は、埋蔵文化財の保存と活用が国家レベルで重要な責務となり、併せて埋蔵文化財調査に関しても、経済的効率性だけの視点ではなく、成果をいかに社会に還元して、地域社会の要請に応えていくかが重要な課題になってきました。その意味で良質の知識と技術が問われております。
 資格をもった埋蔵文化財担当者が、行政組織や民間組織に適切に配置されることが、今後の文化財行政に求められております。

「埋蔵文化財の資格制度を考える」シンポジウムアンケート

円グラフ
「埋蔵文化財の資格制度を考える」シンポジウムアンケート結果
(日本考古学協会会報No.168をもとに作成)

2009年5月に日本考古学協会研究環境検討委員会の主催で開催された「埋蔵文化財の資格制度を考える」シンポジウムでは、埋蔵文化財調査における資格の必要性についてアンケート調査が実施され、そのアンケート結果が公開されました(『日本考古学協会会報』No.168)。それによると関東・関西とも、回答者の半数をはるかに超える人たちが、資格制度は必要との考えを持っていることがあきらかになりました。
考古調査士資格認定機構では、今後とも皆様の声に応えるべく、より望ましい資格制度を目指していきたいと思います。

考古調査士資格制度の目的

 「考古調査士認定機構」は、埋蔵文化財調査の実務を社会に広く伝え、社会の理解を得ると共に、透明性のある考古調査士資格を発行することによって、埋蔵文化財調査の実務に携わる人々の意識を向上させるとともに、社会的地位を保全し向上させる事を目的としております。
 遺跡・遺物は文化財保護法により、「国民共有の財産」と位置付けられております。いままで国土開発事業に伴う事前調査として、遺跡の発掘調査が全国で多数実施されてきました。それは一般に記録保存と呼ばれる方法ですが、その業務に携わるのは大学などで考古学の専門教育を受けた人達です。埋蔵文化財の調査には、専門的な技術と知識が必要だからです。
 埋蔵文化財業務に従事する者達の義務と責任を明確にし、コンプライアンス意識を高揚させ、同時に社会からも高い信頼と評価を受けることを目的としております。そのために「考古調査士資格」を発行致します。

予想される資格の効果

 考古調査士の資格制度は、いままでの日本にはありませんでした。それがないために多くの問題点を抱えてきたのも事実です。埋蔵文化財調査や、保存と活用に関する技術と知識に対して、それを資格化することにより、次のような社会的な効果がうまれると予想されます。
  1. 埋蔵文化財調査の体制が透明性を増すことは確実で、調査担当者の技術や知識が資格によって保障される。
  2. 文化財に関して、社会に対する説明責任を果たすことができる。
  3. 実務担当者(専門職員)が所属する役所などにおいて、従来以上に役所内での足場が堅固になる。
  4. 埋蔵文化財の専門家を新規職員として採用する上でも、明確な基準が設定され、透明性ある人事が行える。
  5. 資格を有する専門職員などを人事面で確保しておくことができ、専門職員の配置率を押し上げることができる。
  6. 埋蔵文化財担当者の募集に関する採用要件に、従来の教員資格や学芸員資格に加えて考古調査士資格を位置付けることが可能になる。
  7. 埋蔵文化財調査の最前線で活躍する人達にとって、技術と知識を保障し、社会の評価を得る契機となる。
  8. 大学等で必ずしも専門教育を受けていない文化財担当者にとって、資格取得によって同等の技量と知識をオーソライズされることになり、任務を遂行できる。